実際やってみると思ったより時間がかかることってある

 例えばペインティング。

 ものに色を塗るなんてせいぜい30分ぐらいで終わると思って高をくくっていたらとんでもない。

 まず当然のことながら塗るための絵の具と絵筆が必要になる。それらのものを準備するのにも当たり前だが時間がかかる。お金もかかる。

 さらに絵の具で部屋を汚さないよう準備しなければならない。作業は汚れてもすぐ洗い流せるよう浴室でやるとして、まず不必要に濡らさないよう浴室の水気を拭き取り、塗ったものを置いておくための下紙なども用意しておかなければならない。一言に何かをするとしてもその準備は煩瑣なことの連続で思った以上に時間がかかるものだ。

 服が汚れないよう下着だけになり、風呂場にしゃがみこんで絵筆を走らせ色を塗る。しかしこれが思ったように進まない。色がはみ出る。線がぶれる。重ね塗りしようとしたら絵筆が絵の具を持って行ってしまいかえって薄くなる……などなど。もちろん、器用な人はただ一度筆を滑らせるだけで思った通りに塗装を完了できるのだろうが、おのれの不器用さを忘れて、そうした優れた技量の人を参考にタイムスケジュールを組むとあっという間に破綻をきたす。

 しかも上から別の色を重ね塗りする場合は、最初に塗った絵の具が乾くまで待たないといけない。これも面倒で、例えばプラスチック製品にアクリル絵の具で色を塗った場合なんかは厚塗りしていると乾くまでかなりの時間がかかる。今の季節は湿度が高いのでなおのこと時間がかかる。やむをえずエアコンのドライ機能を使って部屋を除湿して乾燥を促す、と電気代が余計にかかる。

 上から色を塗ってまたそれがはみ出したりするとまたその乾燥を待って最初の色を塗らなければいけない。そして当然、すべての塗った絵の具が乾ききるまでは、ペインティングされたものはみだりに移動させたり扱ったりすることができない。

 このように最初は片手間仕事でできるだろうと高をくくって始めた作業が、実際にやってみたらあにはからんや一日仕事の大作業で、すっかり予定が狂ってしまい、食事の時間や睡眠時間が削られる。こんなことが度々ある。どう考えてもきちんと計画立てて物事を進めるという能力が無さすぎる。もっともギリギリになるまで追い詰められないと何もしない、という悪癖もここに絡んでおり、計画性の見通しのなさからこのギリギリのラインを見誤ると時間は予定より遥かにオーバーして、本来削ってはいけないはずの時間が削られ、そのしわ寄せは自身の健康や社会生活への悪影響となって現れることとなる。